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抵当権の消滅時効

抵当権とは「債権」を担保するために不動産に設定される「物権」です。
住宅ローンやリフォームローン、不動産担保ローン等を借りる場合、その他、高額の融資を受ける際や弁済猶予する場合の担保として設定されることがあります。

原則として、債権のみならず、所有権と占有権以外の権利は、すべて時効によって消滅するのが原則です。

令和2年4月1日以降の債権

民法第166条
(債権等の消滅時効)
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
 2項債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
 3項前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

令和2年3月31日までの債権

旧 民法第167条
(債権等の消滅時効)
債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
 2項債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅する。

ただし、抵当権は、付従性(附従性)といって、原則として、担保する債権と同時で無ければ、時効によっては消滅しないとされています。

民法第396条
(抵当権の消滅時効)
抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。

つまり、抵当権そのものは、抵当権設定者(主債務者または物上保証人=担保提供した者)との関係においては、担保している債権を弁済しない限り、時効によって消滅しないのが原則です。

抵当権設定者(主債務者または物上保証人=担保提供した者)は抵当権の時効を援用することが出来ません。
しかし、抵当権の設定された不動産を新たに取得した者(第三取得者)は、抵当権の時効を援用することが可能です。

被担保債権の消滅時効中断事由と、抵当権の消滅時効中断事由は異なります。
抵当権は、不動産という「物に対する権利」であり、「債務」ではありませんので、仮に抵当権により担保された債務(被担保債権)について訴訟や債務承認などの時効中断措置が取られたとしても、抵当権の時効が中断されることはありません。

そして、通常、抵当権を設定して融資する場合、支払を延滞した時点で「期限の利益が喪失」する特約を付け、残債務全額について担保不動産の競売(抵当権実行)を申し立てることが出来ます。
つまり、延滞した時点=抵当権実行が出来るとき(権利を行使することができる時)が、抵当権の時効の起算点となります。



抵当権の被担保債権の消滅時効

担保している債権が、金融機関からの借入に対する担保(不動産担保ローン)であったり、工事の請負代金の担保を目的とするような場合、その「被担保債権」は、それぞれ、5年や3年で消滅時効が完成します。

つまり、債権の担保として抵当権を設定している場合、被担保債権の時効が成立となれば、付従性によって抵当権は消滅しますので、債権の消滅時効援用と併せて、抵当権抹消登記に必要な書類一式の交付を求めることが出来るのです。

なお、一般の住宅ローンにおいては、通常、保証協会などの、保証する会社が抵当権者となっており、保証会社が銀行などへの債権者へ代位弁済した時点で、原債権が消滅し、新たな「求償債権」が発生するため、代位弁済してから5年、となりますので、ご注意下さい。

また、直接の主債務者でない、債務者のために不動産を担保として提供した「物上保証人」も、主債務者の消滅時効を援用することが可能です。


最高裁 昭和43年9月26日 判決
他人の債務のために自己の所有物件に抵当権を設定した者は、右債務の消滅時効を援用することができる。