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売掛金の消滅時効

商売上の債権は、原則として5年間で時効が完成します(民法166条・旧商法第522条)。

旧 商法第522条
(商事消滅時効)
商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。ただし、他の法令に5年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる。

つまり、商人間でのお金の貸し借りや、家賃、地代、広告費、などの債権については、5年によって時効が完成となります。

令和2年3月31日までに生じた債権については、旧民法の短期消滅時効の適用があり、以下のとおりとなります。

ネットショッピングなど、小売業者から買い物した商品の代金については、弁済期日の翌日から2年の経過によって時効が完成となります。


旧 民法第173条
次に掲げる債権は、2年間行使しないときは、消滅する。
生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権
自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権
学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権

卸売商人とは、小売業者などの事業者や業務用購入者に対して商品を販売する事業者のことをいいます。
小売商人とは、卸売業者から仕入れた商品を消費者に対して販売する事業者のことをいいます。

いわゆる「問屋」は「卸売商人」に該当しないとする判例があります(大審院判決大正8年11月20日)。
ただし、卸売商人が他の卸売商人など転売を目的とする者に対して売却した商品の代金債権は該当するという判例があります(最高裁判決昭和36年5月30日)。

ネットオークションの場合、個人間の取引であれば時効は10年であり、ショップなど商人から購入した場合には時効は2年、ということになります。

「自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすること」とは、いわゆる請負工事や注文制作のことをいいます。

ただしクレジット決済で購入した場合には、クレジット会社の立替債権となるため、消滅時効期間は、引き落とし予定日の翌日から5年となります(商法522条)。


東京地方裁判所 平成19年11月27日 判決
民法174条4号の規定は,客の委託に基づき第三者が同号所定の営業者に立替払した場合における立替金債権には その適用がないものと解するのが相当である。
クレジット契約に係る立替金の債権は民法174条4号所定の債権に該当しないというべきである。

東京地方裁判所 平成18年9月29日 判決
カードがショッピングで利用された場合,求償金債権を取得し,売買代金を支払うのにカードを利用したか飲食代金を支払うのにカードを利用したかにかかわらず,求償金債権の消滅時効は,商法522条により5年である。

協同組合の消滅時効

漁業協同協同組合や農業協同組合(農協)などの協同組合は、民法173条にいう生産者や卸売商人または小売商人のいずれにも当たらず、商人では無いとする最高裁判例があります。

消費生活協同組合(生協)についても、消費生活協同組合法第9条に非営利であることが明文化されています。

よって、これらの協同組合が組合員に対して有する債権は、いずれも商行為では無いため、時効の期間は10年間となります。

※令和2年(2020年)4月1日以降に生じた債権については、改正民法の施行により、
 「債権者が権利を行使することができることを知った時
  から5年間、権利を行使することができる時から10年間
」 となります。


その他の短期消滅消滅時効

その他、令和2年3月31日までに生じた売掛金については、その種類により、3年、2年、1年、などと、細かく決められており、非常に短期で消滅時効が完成となります。

主要なものとしては、以下のとおりです。

3年の消滅時効

  • 建設業者の工事請負代金
  • ホームページ作成代金
  • 病院の診療代、薬剤費
  • など。

2年の消滅時効

  • 卸売業、小売業などの販売する物品の商品代金
  • 理髪店の理容代金やクリーニング屋の代金
  • 学習塾や習い事の月謝
  • 弁護士の報酬金
  • など。

1年の消滅時効

  • 運送業者の運送代金、レンタカー代金
  • ホテルや旅館の宿泊料
  • 飲食店の飲食代金(飲み屋のツケなど)
  • など。

取引先からの売掛債権の請求に対する消滅時効

もちろん、原則として、契約は守られるべきものであり、支払うべきものは支払うのが原則です。
しかしながら、様々な事情で返済不能または債務不履行となってしまい、相当な期間が経過してしまう場合があります。
そのような場合、唯一、援用の意思表示のみで債務が消滅する制度が「消滅時効」なのです。

売掛金の時効については、返済期限の定めがある債権については、期限の翌日より、また、返済期限の定めが無い債権については、債権発生日の翌日より、期間の満了を以って時効が完成となります。

ただし、短期消滅時効の債権であっても、裁判での判決や調停成立などによって確定した債権については、確定した日より10年間は時効が完成しませんので、ご注意下さい。

民法第174条の2
(判決で確定した権利の消滅時効)
確定判決によって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。